草祭

草祭

草祭

ひっそりとした路地の奥、見知らぬ用水路をたどった先。どこかで異界への扉が開く町「美奥」。その場所は心を凍らせる悲しみも、身を焦がす怒りさえも、静かにゆっくりと溶かしてゆく。消えたクラスメイトを探す雄也、過去から逃げ続けてきた加奈江……人びとの記憶に刻まれた不思議な死と再生の物語を注目の気鋭が綴る。

美奥という怪しい土地を舞台にした連作集。

けものはら
小さい頃に迷った水路地の先にある不思議な野原に、行方不明になった友人がいた。だが友人の近くには母親の遺体があり、友人は行方を晦ました理由を語り出した。物語の導入部分とも云える話。話が進むに連れて友人が異質なモノに変わっていく所は切ない。
屋根猩猩
女高校生の美和は学校でいじめ紛いの嫌がらせを受けつつも、クラスメートの欠点をノートに書き込みながら過ごしていた。ある日、中学生の頃に描いた「バカトラ」のファンと地域限定の神様という男の子が現れ…
突然、地域限定の神様になってしまうと、学校に行かずにご近所を掃除したり他人の家に勝手に上がり込んで屋根に登ったり出来る様で羨ましい。
くさのゆめがたり
山奥でひっそりと、豊富な知識を持つ叔父と生活していた私。ある日、私は叔父を毒殺してしまう。叔父を殺したあと、私は山中で出会った和尚に付いて行き、里で暮らす様になり和尚の娘に恋心を抱いてしまう。
何故、美奥と呼ばれる様になったかを描いた話。
天化の宿
双子の男の子に連れられてやってきた宿は、苦解きを行う場所。苦を解くためにはカードゲームを10局行うしかないので、頑張って10局行う主人公。遊戯王カードより代償が重い気がするけど、その代償で苦が解けるとは…
朝の朧町
不倫の末に旦那が殺され、生き場を失った香奈枝は、旅行先で知り合った長船さんの家に同居させてもらう事に。ある日長船さんに連れてられて不思議な町に来たが、そこは香奈枝の知っている昔の町で昔の知っている人々がいた。長船さんに連れられてきた町、町に入り込んだ人の記憶を元に町や人を造り出す不思議な町。人の記憶から無造作につくるせいで、好きな人も嫌いな人も、思いだしたくない記憶まで造り出す、何とも精神的に苦痛になりそうな町なんだろうか。

どれも幻想的なお話で、心地よい余韻を与えてくれるお話ばかりでした。同じ舞台を題材にしているので、話が進むに連れて世界が繋がって行く雰囲気が楽しめた。