トンコ

トンコ (角川ホラー文庫)

トンコ (角川ホラー文庫)

高速道路で運搬トラックが横転し、一匹の豚、トンコが脱走した。先に運び出された兄弟たちの匂いに導かれてさまようが、なぜか会うことはできない。彼らとの楽しい思い出を胸に、トンコはさまよい続ける…。日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作をはじめ、親の愛情に飢えた少女の物語「ぞんび団地」、究極の兄妹愛を描いた「黙契」を収録。人間の心の底の闇と哀しみを描くホラーの新旗手誕生。

ぶひ。
ぷぎぎぃ。
ぶひ。
ぷぎぎぃ。


トンコ
事故で養豚トラックが横転し、そこから逃げ出した養豚のトンコを描いたホラー小説。ただ豚が逃げ出して、最後は捕まってしまうまでの話。初めて豚の気持ちになって本を読んだのは。一緒に育った兄弟ブタたちが養豚場から何処かへ連れて行かれたり、人間たちから忌み嫌われてと散々な目にあっている所は養豚場育ちのブタから見ればホラーなんだろうなと感じた。特に兄弟豚たちの匂いを頼りに探して見つかるのは、ビーフジャキーの袋だったり、捨てられた生姜焼き弁当だったりと、兄弟豚たちの末路が…

ぞんび団地
親から虐待を受ける女の子が、家族共々、ぞんびなって幸せになろうとする話。
興味本位でやって来る人間たちを襲っているぞんびたちが、ぞんびになりたがっている女の子を襲わないギャプが何とも言えない。前半は笑いを誘い、後半では何故、女の子はぞんびに襲われないかが明かされるけど、もう少し明確な伏線が欲しかった。
ちなみに作中に登場したぞんびたちは律儀なぞんびばかりなので、襲われなければご近所さんで欲しい。

黙契
自殺をした妹と、悔やみながらも妹の死の真相を追う兄の物語。
他の二作に比べて、シリアスな内容。